まるで吾北の合併40周年を祝うかのように、平成8年夏、一本の美しい映画が全国の劇場で封切られた。
高知出身の絵本作家・田島征三、征彦兄弟の少年時代を描いた「絵の中のぼくの村」である。
そのロケ地のひとつとして吾北村が選ばれ、筒井二三四さん(77才)、北川留寿さん(76才)、小川港さん(76才)の3人は、不思議な老婆役としてスクリーンに登場した。
もちろんエキストラではない。
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「みんな、映画のことはなんにも知らんので怖さもなく、ひょいと出てしもうた」というあんばいである。
しかし、この役は、本来、原作にはないもので、いわば、東陽一監督のオリジナルという大役中の大役。
監督自らが出向いて、3人をスカウトしたというわけだ。
「私らぁの役柄は300年前にこの世を去った人間で、それが現実の世界に戻ってきたというもので、言うたらまぁ、妖怪でしょうか」と、筒井さん。
その3人の出番は、吾北村柿薮のシャクジョウカタシ(ヤブツバキ)の木の上で座った幻想的なシーンに始まり、せりふも堂々たる名女優さんぶりを発揮したのだった。
「衣装あわせの時、『私は今日はきれいな俳優さんじゃ』と思うて喜んで行ったがです。
ところが髪も真っ白に染められて、昔のボロい着物に破れた帯を締められて『ありゃ、これは思惑が違うたよ』と(笑)。けんど、いい思い出になりました。あんな思い出はそうない」と、北川さん。
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その撮影は約2ヵ月にわたって県内各地で行われたが、映画のなかには見慣れた吾北の風景がいたるところに登場する。
「監督さんから『映画とは不思議なもんですよ』と言われちょったがですが、『なるほどこりゃ不思議なもんじゃ』と思いました。
吾北はこんなにきれいな村やったのかと、あらためて思いました」と、筒井さん。
「息子や親戚は、映画のなかの私を見て唖然としたそうですけんど、吾北村の美しさを映画に教えてもろうたそうです」と、小川さんもその感動を語る。
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「映画を観て、いよいよ、うちの村はこんなにいいもんじゃろうかと思いました。
吾北村をPRするというつもりで出させてもろうたけんど、本当に良かった」と、北川さん。
だが、その村への思いは、映画を観た吾北村の住民たちもまた、同じだったのではないだろうか。
その映画は海を渡り、ドイツで開かれた「第46回ベルリン国際映画祭」で、グランプリに次ぐ銀熊賞を受賞。世界の人々から賞賛の拍手をもらった。
「たまぁるか、私らぁ国際女優になりましたぞね(笑)。ノーギャラやったけど、ほんとうにいい経験をさしてもろうた。えっ、また出てくれと言われたら?そりゃもう、なんぼじゃち出ます(笑)。」
3人は、映画の大事な展開の要所要所に効果的に現れるのだが、外国人の目には、この不思議な妖怪たちも村の守護神、3人の神様と映ったらしい。
ともあれ、その怪優、いや、名優たちの活躍に拍手を贈りたい。
(平成9年発行 吾北村村勢要覧「ほのぼの吾北」より)
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