にこ渕
むかしもむかし、高知のお城下に大金持の商屋があったと。
その店には、そりゃあきれえな娘さんがおったが、親が二升、二秤(ふたますふたはかり=秤をごまかすこと)を使うて儲けたばちがあたって、美しい娘の肌が次第に荒れて来たそうな。
そして夜になると蛇に姿を変えて川で水浴びをするようになったと。
それで家においちょけんようになって、親は大金を持たせて、「人目につかんところで暮らせ」というて旅へ送り出したと。 |
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娘は伊野(いの)から川を逆上り、程野(ほどの)にええ渕があるのを知って歩いて行き、渕に着いたので、そこで棲もうとしたら、そこにはえんこうが七頭、蛇が八頭もおって、入り込む余地がないんじゃと。
あきらめて、他を探そうとしたけんど、日が暮れて来たけに、ある家を訪ねて「一晩泊めて下さい」と頼んだと。
山の人達は親切で、「さあさあ、泊りや」と快く泊めてもらえることになったそうな。
夕食のあと、娘は、「私は寝相が悪いので迷惑をかけてもいけませんから、かまや(=台所)のこしき(=米などを蒸す道具)の中で眠らせて下さい。それに決して覗(のぞ)かないで下さい」と言うんじゃと。
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主人は、若い娘が妙なことを言うが、と不審に思うた。気がかりになって夜中にそっと覗いて見たと。
すると、こしきが持ち上がり、そのこしきの下からは大蛇がとぐろを巻いちょるのが見えたもんじゃけ、主人は腰をぬかしたと。
朝になると、やっぱり美しい娘になって起きてきたので朝食を食べさせたが、別れるとき娘は、
「あれ程約束したのに見ましたね。言うた通りにしちょったら、お金を差し上げたのに、私はこれから高知の北山の七つ渕(ななつぶち)へ行きます」
と、言い残して去って行ったそうな。
けっこうまっこう滝まっこう、猿のつべは、真っ赤こう。
-ごほく樹と水物語〜昔物語・おわり-
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